マーケティング戦略を徹底解説|立案から実施の流れ・成功のコツとは
マーケティング戦略は、企業が市場競争力を高め、目標を達成するための計画的なアプローチです。企業の成功に欠かせないマーケティング戦略ですが、その立案や実施にはいくつかのポイントがあります。今回は、マーケティング戦略の重要性や分析に役立つフレームワーク、成功させるために必要なことについて詳しく解説します。
1. マーケティング戦略とは
マーケティング戦略とは、市場や顧客のニーズを起点に、商品やサービスを開発し、必要とする人(ターゲット)に競合よりも優れた形で届けるための戦略を立案することです。モノだけでなく情報があふれる現代社会において、自社の顧客となり得る人を見極めて自社の独自性を伝えることができれば、ファンの獲得や中長期的な売上の向上にもつながります。
1-1. マーケティング戦略の重要性
マーケティング戦略が企業にとって重要な理由は、市場シェアの拡大、顧客の獲得と長期間にわたる維持、そして収益の増加など事業を成長させるための目標達成に不可欠だからです。マーケティングの現場では長年言われていることですが、高機能・高性能な商品が必ずしも顧客にとって良い商品とは限りません。顧客のニーズに合っていなければ「不要なモノ」でしかないのです。また、顧客にとって良い商品であったとしても、それが「欲しい人」に届けられなければ意味がありません。「どのような人にどのような価値を届けるのか」「そのための手法はどうするのか」などを総合的に計画・立案・実施することが重要です。
1-2. マーケティング戦略の良否が企業に与える影響
マーケティング戦略を適切に立案し実施することは、企業の競争優位性を高めることに直結します。顧客と長い期間にわたって良い関係が構築できれば、市場での存在感が高まり、競合他社との差別化も可能となるでしょう。マーケティング戦略のノウハウを社内に蓄積することで、新たな市場に挑戦する際もターゲット設定や情報発信がスムーズに進みます。
1-3. マーケティング戦略がもたらすメリット
マーケティング戦略が正しくあると、各現場のその場の雰囲気で意思決定が進み全体的にちぐはぐになったり、ターゲット層以外の声に振り回されたりすることによるロスを削減でき、目標に向かって経営資源を効率的に活用できます。また、上手くいかなかった場合にも立ち戻るものがあるため、原因を突き止め、改善のための取り組みにつなげやすくなります。もしも戦略がなく、直感的な感覚でビジネスを展開すれば、人・モノ・カネ・情報などの経営資源が分散されることに加え、失敗した場合に結局何が悪かったのかを判断できず、失敗からの学びやノウハウを蓄積できないため、いつまでたってもマーケティングに強い組織になりません。
2. マーケティング戦略において知っておくべきフレームワーク
マーケティング戦略の立案において押さえておくべき「STP分析」「4P分析」「マーケティングファネル」の3つのフレームワークについて解説します。
2-1. STP分析
STP分析とは、以下の3つの要素からマーケティング戦略を策定する枠組みです。
・Segmentation(顧客のニーズ別に市場を分類)
・Targeting(分類した市場でどこをターゲットにするかを設定)
・Positioning(ターゲットセグメントの中でどの立ち位置を確立するかを設定)
顧客が求めているものを把握したうえでターゲットを明確化することにより、無駄のない効果的なマーケティング戦略を実施できます。また、市場での立ち位置分析も行うため他社との差別化ポイントもあわせて整理できるフレームワークです。
2-2. 4P分析
4P分析は、STP分析をもとに立案したポジショニングを確立するために、商品(Product)・価格(Price)・販売促進(Promotion)・流通(Place)の4つの要素を戦略的に考え、市場における競争優位性を追求するものです。
・商品(Product)
顧客が商品・サービス品に求める価値、提供できる顧客体験とは?
・価格(Price)
競合他社との比較および採算面の考慮
・販売促進(Promotion)
商品やサービスを通じて顧客に伝えたいメッセージとは?
・流通(Place)
流通や販売網の整理と構築
顧客に商品やサービスを届けるまでの一連の流れを俯瞰し、自社商品・サービスの価値を生み出し、ターゲットにしっかり届けるための道筋を整えるイメージです。
2-3. マーケティングファネル
マーケティングファネルとは、顧客が商品やサービスの購入に至るまでのフェーズを主に4つの段階に分けて考えるフレームワークです。「認知」「興味・関心」「比較検討」「購入」という4段階それぞれで効果的な販売促進活動を実施し、顧客を惹きつけて購入へとつなげるためのプロセスを構築するのに役立ちます。
さらに、購入後の継続的な関係性構築や紹介・口コミ等での拡散により、一過性で終わらせない取り組みも狙い、「継続」「紹介」というようなフェーズを設けるケースが増えています。自社事業の状況を考慮した上で最適なフェーズを設定することから始めると良いでしょう。
3. マーケティング戦略立案から実施までの流れ
マーケティング戦略の立案から実施までには、主に4つのステップがあります。概要を理解して自社での実践に活かしてください。
STEP1:自社を取り巻く環境の分析
マーケティング戦略の立案では、まず自社を取り巻く環境を正確に把握することが重要です。競合他社の動向や市場のトレンド、顧客ニーズ、行動パターンなどを分析することはもちろん、自社の強みや弱みといった内部的な分析も欠かせません。できる限り客観的な情報を数多く集め、自社の現状を正確に把握しましょう。顧客ニーズにおいては、顕在化しているものだけでなく、潜在的なものも探索できると新たなチャンスを見つけられる可能性が高まります。
STEP2:狙うターゲットの選定
次に、ターゲットとなる顧客を明確にします。このとき4P分析のSegmentation(顧客のニーズ別に市場を分類すること)が役立ちます。自社の商品やサービスをどの層の顧客に届けたいかを明らかにすれば、価格や販売促進方法もスムーズに決定できます。この際に重要となるのは、市場を分類する際の軸です。この軸に独自性を出すことができれば、競合と異なる土俵で戦うことができ、優位性を築ける可能性が高まります。
STEP3:価値提供における競合優位性の確立
顧客にどのような価値を提供するのかを整理して、競合他社との差別化ポイントを洗い出します。商品やサービスの特徴、手にすることで得られるメリットを言語化したうえで、市場で競争力になり得る部分をピックアップしていきます。STEP2で定めたターゲット層も考慮して、安さ・高品質・希少性・機能性など数あるアピール方法の中から自社製品に合うものを選択し、マーケティング戦略に盛り込みましょう。
STEP4:戦略の具現化・実行計画策定
最後に、具体的な施策やアクションプランを策定し、マーケティング戦略を実施します。売り上げや会員登録などの数値目標と、いつまでに実現するのかというタイムラインを設定し、戦略実施に向けたスケジュールや予算計画を立てます。実行においては、社内の他部門や外部との連携が必要になるケースも多く、事前に戦略の共有や協力体制を整えておくことも重要です。
4. マーケティング戦略を成功させるために必要なこと
マーケティング戦略を成功させるには、以下で説明する3つのポイントに注意が必要です。
4-1. 目標を明確にした上で取り組む
マーケティング戦略には目標設定が欠かせません。目標がない状態でスタートすると、当初の計画よりコストが増大したり、いつまでも効果が出ない施策に無駄な時間を費やしたりする可能性があるからです。
・売り上げや利益率など購買に関わる数値
・会員登録、問い合わせ数などの数値
・自社のWEBサイト、ECサイトなどへのアクセス数
・リピート購入などのファン獲得数
上記のような目標を中長期と短期でそれぞれ設定し、その達成状況から施策の有効度を測ることが重要です。
4-2. 常にターゲット視点で考える
マーケティング戦略には様々なフレームワークが存在しますが、分析の際に忘れてはならないのが「ターゲット視点」、つまり顧客のニーズや要求、困りごとを理解することです。商品やサービスを提供する側から見た世界と、顧客側から見た世界にずれがあることを常に念頭に置き、顧客が本当に求めている価値を提供するよう努めましょう。
4-3. 戦略策定後はPDCAを回しながら検証/改善を繰り返す
マーケティング戦略は実施して完了ではなく、結果を検証・評価し、必要な修正や改善を繰り返し行う必要があります。市場や顧客のニーズは絶えず変化しているため、時には当初の計画から大幅な変更を迫られることもあるでしょう。日頃から自社を取り巻く状況の変化を敏感に感じ取り、データ分析や社内チーム間での情報共有を実施して、計画の修正があった場合も大きなダメージを受けない体制づくりが重要です。
5. まとめ
マーケティング戦略は、事業の成長と市場での競争力獲得のために不可欠なものです。成功のポイントは、明確な目標設定と市場の変化にも柔軟に対応する姿勢です。PDCAを回して常にマーケティング戦略が健全な状態かをチェックし、顧客視点に基づいた意思決定をおこないましょう。