レポート

マーケティングとPR

商品やサービス、または企業のブランディングを検討する際には、PR(広報活動)の検討がよく行われます。ブランディングとPRは密接に関連しており、相互補完的な役割を果たすと言えます。以下では、マーケティング担当者が実務としてPRを実践する方法論をご紹介します。

1. PR(広報活動)とは

PRとは、Public Relationsの略で、「広報活動」と訳されます。つまり、組織とそれを取り巻く公衆との間の良い関係づくりのことを指し、具体的には、企業や団体が自らのメッセージや情報を中立的な第三者(メディアなど)を通じて発信することを指します。最近ではSNS人気も後押しし、メディアに限らずブロガー、インスタグラマーやユーチューバーなども重要な第三者として位置付けられています。

留意点として、日本ではこの概念が曖昧であった時代が長く、“商品をピーアールする”という概念が宣伝活動として捉えられており、「広報活動」だけでなく、「広告」も一緒になって語られてきました。
「広告」は、企業や団体が自らのメッセージや情報を直接的に広告スペースを購入して発信します。広告は企業や団体の意図や要望に基づいて制作され、主観的な視点で商品やサービスを宣伝するもので、PRとは全く異なるものです。

昨今、PRが注目される理由は大きく2つあります。

一つ目は、広告に代表されるように企業からの一方通行の情報発信に消費者が反応しなくなり、広告効果が低下している点です。ひと昔前には、話題のテレビCMでモノが売れる、または新聞の1面広告が話題になるといった時代がありましたが、今はご存じの通り、広告に対する消費者の反応が薄くなっており、PRにより中立的な第三者(メディアなど)を介して情報を発信することで情報拡散を狙うケースが増えています。

二つ目は、上述の通り広告効果が減退する中で、広告予算を削減し、コストカット目的で出稿費用が不要なPRに注力している点です。リーマンショック後など、広告予算が大幅に削減されるなど経済市況が悪化すると、一機にPRへとシフトする企業が増えることがこれまでも幾度と起きています。

2. PR戦略の立案

PR実施を検討する際、PRを専門業務とするPR会社へサポートを依頼することを検討するケースが多いかと思います。もちろん間違いではありません。しかし、以下の通りPR戦略を検討する上で必要不可欠な要素は事前に整理検討した上で次のステップに進められることをお勧めします。

①PRの本質を理解する

PRを広告と同列に考えるのは間違いです。どちらもメリット・デメリットが存在することを理解する必要があります。その上で、PRの一番のメリットとデメリットをここで挙げます。

≪メリット≫
第三者による紹介により、高い信頼性を獲得できる。また、その第三者が大きなメディアである場合、広告では簡単に実現できない程のリーチ数(消費者に届く数)が実現可能です。 判りやすい例ですと、NHKの番組で紹介されると、日本全国にリーチ可能ですし、信頼性の高い情報として消費者がその商品やサービスに飛びつくことになります。

≪デメリット≫
情報発信といった重要な役割を、第三者にゆだねることの弊害が多く存在する。そのままですが、こちらは事業計画など計画性を持って進める企業経営にとって大きなリスクになります。情報発信の内容を委ねるリスクも当然ですが、中でも問題になるのが、情報発信の時期をコントロールすることが難しい点が挙げられます。 例えば、新製品発売と同時に情報発信したいが、PRだといつメディアが取り上げて紹介してくれるのか、数日単位ではなく、数か月単位で不明確となります。

以上の様に、PRを万能の策としては捉えてはいけないことは重要です。

②メディア(第三者)の文脈が重要

PRは第三者に紹介いただく構造です。つまり、第三者のメディアなどにとって、その情報を伝えることのメリットが無いと紹介いただけない訳です。広告であればお金です。それと同様のメリットがメディアにも必要なのです。

それは、読者や視聴者が面白い、このメディアの情報は役に立つと思い、そのメディアを愛読・視聴してくれることです。それがメディアにとってビジネスにつながります。具体的な例で示すと、テレビだと視聴率が広告収入に直結します。視聴者にとって面白くない情報を紹介すると、一瞬でチャンネルを変えられてしまい、数百万人単位で視聴者を失うことになるのです。

メディア(第三者)にとってメリットある情報に変換し、情報を発信する工夫が欠かせません。

しかし、残念ながら、今日でもPR会社などが「〇〇メディアと強いパイプがあるので紹介してもらえますよ!」といった謳い文句をされていると聞きますが、そんな簡単な問題ではないのです。テレビだとしたら、つまらない情報を紹介して視聴率を下げるプロデューサーは担当を外されるでしょう。

以上の様に、自社がどのような情報発信を狙うのか、その情報がメディア(第三者)にとって有益かどうかまで含めて検討し、設計する必要があります。

③長期戦と常に改善

以上の通りPRはメディア(第三者)とのリレーションが必要ですが、広告などでは実現しない、大きな成果を得られる可能性が高いのも事実です。世の中で成功事例として紹介されるPRは多々存在します。皆さんも思いつくことがいくつかあるのではないでしょうか。

しかし、それらの成功事例や成功の瞬間は皆さんの目に留まりますが、その裏側で長年地道にその成功に向けて活動されてきたPRの軌跡などは知らないと思います。私たちは裏側で支援を多くしてきたので知っていますが、成功の裏側には地道な長い活動が欠かせません。

つまり、PRは長期戦であり、常に手を変え品を変えて取り組む必要があります。その組織基盤や体制を整えた上で、チャレンジしていくものであることを理解することが必要です。

3. 効果的なPR実践策

ではPRを実践する上で、何を準備し取り組むべきかここで説明します。様々なノウハウが存在するため、ここでは書ききれないですが、活動イメージを持ってもらえればと思います。

①PRの目的整理

事業戦略や経営戦略に基づいたマーケティング戦略において、PRが役割を果たす領域を整理します。すなわち、PRは営業活動や広告活動などと同列のマーケティング戦略を実現する実行施策の一つとして俯瞰した上で、マーケティング活動においてどのような課題解決を目的に実施するのか整理します。

②PRコンテンツのセットアップ

PR活動は先に示した通り、メディア(第三者)にとっても有益な情報である必要があります。そのため、営業活動や広告活動では必要のないことが多い、ストーリーやメディアが取り上げたくなる情報、すなわち“ネタ”となるPRコンテンツ(自社が発信したい情報+メディアが求める情報)を予め用意する必要があります。 この“ネタ”の良し悪しが成果に直結するため、熟考が必要なのは当然です。さらに、その“ネタ”の準備(セットアップ)には時間と費用といったコストが掛かることも忘れてはなりません。

③メディアプロモート活動

PRコンテンツ(”ネタ“)のセットアップが終了してようやく、メディア(第三者)にアプローチする段階となります。この段階も労力がかかります。メディアにドアノック営業を行うのと同じだと考えてください。正に、売り込みです。 スタッフの余力があれば、自ら実施することも可能ですが、余力がない場合は、PR会社にこの部分を中心に依頼することも一般的です。しかし、ドアノック営業と同じで、いくら営業スタッフの話術が素晴らしくても商品となる、”ネタ“であるPRコンテンツが良くないと成果につながらないことを忘れてはなりません。

④月次PDCA

メディアプロモートを地道に続けていると、メディアのPRコンテンツに対する反応が随時返ってきます。その反応を常に受け止めて、次の”ネタ”開発へと進めいくのがPR活動の基本です。 また、メディアが見事に貴社の情報を紹介してくれた場合は、その露出内容を分析しより良い露出につなげる為に何が必要かを検討し、同様にPRコンテンツへと反映していきます。

4. PRの成果判断

PRの成果判断には、定量指標(メディア露出量、広報指標など)と定性評価(関係者の意見、評価、調査結果など)を組み合わせることが一般的です。

しかし、PR会社などはメディアの露出量といったわかりやすい定量指標を成果とする慣習がいまだに残っていることが多いです。発注者側の企業も目標数として定量的に露出数をKPIに設定することが多い点も要因となっています。この方式は問題点が多い為、留意点として記載しておきます。定量指標では、今月は10件のメディアで紹介があったなど言って形で件数の大小が成果として示されます。そのため、効果が低いメディアでの紹介や、企業が求めている内容ではない露出であったとしても、件数稼ぎに走ってしまう点です。

PRを実施する目的に対して、評価を正しく行うことが欠かせません。例えば、販売促進におけるPR効果を目的とするのであれば、予め生活者への定量調査を計画しおき、この調査項目が高まっていることがPR効果の影響であると判断するといった成果判断を設計しておくことです。それら設定ノウハウも業界や商材によって多種多様ですので、この場では割愛させていただきますので、ご相談頂ければと思います。

以上、この場では大きな流れをご説明しました。PR活動は様々なノウハウと留意点がある活動だと理解いただけますでしょうか。ご検討される方はご相談いただければ、より詳細についてお伝えさせていただきます。

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