レポート

マーケティングの組み立て方

売上が上がらない、新しいマーケットに参入、新製品を開発、などといったビジネス課題に直面した際、誰もが“マーケティング”を検討することになると思います。しかし、日ごろからマーケティングに関わる業務を行っていない場合、どのようにマーケティング戦略を考えるのか、何から考え始めるべきなのかと思案し、行き詰まることが多いのではないでしょうか。
そこで、売上につながる“マーケティング”の組み立て方をご紹介します。

1. 業界によって異なるマーケティングの概念

驚くことに日本では、一言で“マーケティング”と言っても、業界や企業でそれぞれ概念や具体的な業務内容が異なっています。マーケティングの定義は、既にマーケティングの専門機関や学者によってなされており、端的にまとめると、標的市場の選択、製品やソリューションの価値の創造、その伝達、顧客の獲得、維持、育成といった一連の活動であり、市場創造のための総合的活動であるとされています。つまり、ビジネス全体に関わる、企業として売上・利益を構築するすべての活動に関わることと言えます。

しかし、日本ではマーケティング部やマーケティング課と銘打った部署が存在していても、先に挙げた定義にすべて関わっているケースはほぼなく、ごく一部を専門的に担っており、その業務=マーケティングだとの誤った理解が、その企業や業界内において定着しているのが現状です。例えば、BtoBの電機や機械メーカーにおけるマーケティングとは、市場調査としてのマーケット規模算出のことを指し、広告業界ではインターネット調査やヒアリング調査などの消費者調査を行う部門がマーケティングとされてきました。

つまり、マーケティングの概念や知見が業界や業務領域によって偏っていることを自覚した上で、先に示したマーケティング概念に立ち返り戦略立案に向き合うことが出発点として重要です。

2. フレームワークの限界

マーケティング戦略を組み上げる際に、フレームワークの活用が挙げられます。一例をあげると、「STP」、「4P分析」、「SWOT」、「PEST分析」、「AIDMA」などが良く見聞きされ、使われたことも多いのではないでしょうか。中でも“マーケティング”のテーマでよく目にするのが「4P分析」と「AIDMA」ですが、先に挙げたものはいずれもマーケティングに関わるフレームワークの一部で他にも多く存在します。

フレームワークは綺麗に整理でき、答えが見つかったような気持ちになり、社内資料などにおいて説得力が増すこともあり、重宝されていると思います。しかし、フレームワークを埋める、フレームワークを完成させることがゴールになっているケースも見受けられ、そもそも正しくフレームワークを活用できていないケースも多いのではないでしょうか。

いずれにせよ、多くの方が立ち止まることになるのが、これらのフレームワークを活用し、綺麗に戦略を描けたのは良いが、この後にどうすればよいのか?ということのように思います。もしくは、毎回綺麗に整理し戦略設計できているのに、なぜうまく行かないのか?なぜ、マーケティング課題に毎度ぶつかるのか?と思われているのではないでしょうか。

そこにフレームワークの限界があるのです。限界は大きく分けて2つあります。

1つ目は、フレームワークが様々な課題テーマに対応する形で存在し、一つのフレームワークでマーケティング課題をすべて解決するものではない。つまり、複数のフレームワークを駆使し、戦略設計する必要があるということです。1つのフレームワークですべてのマーケティング戦略が出来上がるわけではないことを理解することが重要です。

2つ目は、フレームワークを活用し整理・分析する主人公が自分であることです。つまり、どうしても自社のことを期待も込めて有利に分析してしまうという自己バイアスも問題です。例えば、この領域は競合よりも優位だと整理したとしても、顧客の立場からすると、有利には思われていない、もしくは、そもそもその優位性に対して何も関心が無いかもしれません。自己バイアスを取り除き、適切にフレームワークを活用することが一番難しいと言えます。

3. 戦略から実務への展開

それぞれのフレームワークを駆使し戦略を組み上げ終えると、社内の説明資料としては出来上がっているのですが、明日からの実務で何をどのように推進するべきかまでは整理できません。日々の業務に、これら戦略を落とす橋渡しとなる設計整理が残されています。では、橋渡しにはどのようなものが必要でしょうか。

日々の業務では、商品開発や営業活動、または、ターゲットとする消費者や顧客へのコミュニケーションなどに従事し、マーケティング戦略の実行に向き合うこととなります。その際に、それぞれの活動対象である顧客の消費行動(購買行動)をミクロな視点まで落とし、それらターゲットの消費行動をどのように変えると、先に整理したマーケティング戦略が実現できるのかを描くことが、戦略と実務の橋渡しになります。

具体的に一例を説明します。

競争が熾烈な市場において、自社のユニークな価値を武器にビジネス拡大を狙うとすると、そのユニークな価値に対して、ターゲットがどう気づき、その価値欲しさに購買を行うのかを、ミクロレベルで整理し、その実現策を企画立案し実行することです。つまり、ターゲットがその価値に気づくにはどのような情報をターゲットに届ける必要があるのか?(コンテンツ)また、その情報はどのように届けることが可能か?(届け方)と整理され、日々の業務で取り組むレイヤーまで落とすことが可能になります。

以上のように、戦略とターゲットとなる個人(組織)の消費行動(購買行動)を結びつける整理が、戦略から実務への橋渡しとなるのですが、このパートが抜け落ち、実務において戦略を意識して行動しよう!といった意気込みだけで推進しているケースが多く見受けられます。

4. 態度変容の設計

最後に、顧客の消費行動(購買行動)をミクロな視点まで分解し、実務に落とす上で必要な方法論を示します。

まず対象となる顧客を記します。以下には便宜的に上段に記載しております。一方で、企業が売りたいものを最下段に記します。その間をどのように埋めるのかを、顧客の態度変容として記載していきます。重要なのは、企業が売りたいもの出発で物事を考えるのではなく、顧客起点で考える点です。
その上で、顧客が貴社商品やソリューションを購買したいと意識が変容する(頭の中が変わる)までのシナリオを整理設計し、そのために必要な活動(営業やコミュニケーション、商品化など)へと落とし込むことで、階段を積み上げるように正しくマーケティング戦略実現へと近づく実務が整理可能です。

以下に基本となる4段階の検討整理レイヤーを記載します。いずれも、ターゲット顧客をしっかりセグメントした上で、顧客視点に立って設計することが大切です。

  1. 顧客の現状(現状の貴社商品の理解度や理解内容、顧客が抱えている課題や欲求など記載)
  2. 振り向いてもらうために必要な態度変容は何か(振り向いてもらえない前提から考えを始める)
  3. 購買を検討してもらうために必要な態度変容は何か(振り向いても購買検討まではまだ溝があるため、購買検討の土俵にのってもらうために必要なポイントを整理)
  4. 他社ではなく貴社商品やソリューションを選択する理由は何か

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