レポート

プロモーション戦略とは?販売促進のプロセスと成功事例

製品やサービス自体の魅力が高くても、多くの人に存在を知り、良さを理解してもらわなければ販売にはつながりません。プロモーション戦略は製品やサービスのターゲット層を明らかにし、効果的な販売につなげることを狙います。
本記事ではプロモーション戦略の概要やプロセス、成功事例などを分かりやすく解説します。

1. プロモーション戦略とは?

プロモーション戦略は製品やサービスの認知度を高め、顧客とのエンゲージメントを強化し、最終的に販売を促進する計画的なアプローチです。           

1-1. プロモーション戦略の種類

プロモーション戦略は大きくプッシュ型とプル型に分類されます。さらに、ターゲットによってBtoCとBtoB型に分けて考察することができます。            
           
■プッシュ型とプル型で分類           

          

プッシュ型プロモーションは企業が能動的に製品/サービスの情報をターゲットに伝えるアプローチです。TV広告やEメールキャンペーンなどを通じて、ターゲットに直接製品情報を伝えます。購買プロセスを最小限にし、顧客の購入行動を促進します。            
プル型プロモーションは潜在顧客の欲求を引き出し、自社製品/サービスへの関心を自発的に持たせるアプローチです。WebサイトやSNSを活用し、顧客が自ら製品/サービス情報を求める状況を作り出すことを目指します。            
               
■BtoC型とBtoB型で分類           

          

BtoCは個人消費者を対象とし、感情やライフスタイルに訴えるアプローチが中心になります。BtoBはビジネスの意思決定者や担当者をターゲットにし、課題解決に向けた合理性あるソリューションの提供や長期的な関係構築を目指します。

1-2. プロモーションの主な手法

  • 広告
  • SNS
  • 対人販売(営業)
  • セールスプロモーション
  • 広報 (Public Relations: PR)
                 

プロモーションを進める上での具体的な手法を解説します。ターゲットオーディエンスの特徴を考慮し、有力な手法を選択しましょう。                
               
<広告>                
テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、オンラインメディアなどの多様なチャネルを通じて、製品やサービスの情報を広く伝える手法です。メディアを通して半強制的にターゲットに接触することができる手法である一方で、近年は企業広告が素直に受け取られにくくなっている側面もあるため、興味・関心を持ってもらえるようなメッセージや見せ方の工夫が重要になっています。                
               
<SNS>                
Facebook、Twitter、InstagramなどのSNSプラットフォームを利用してターゲットと直接、かつ、双方向のコミュニケーションをとる手法です。ターゲット層とのエンゲージメントの強化、リアルタイムでのフィードバック収集、口コミやシェアによる情報の拡散を図ります。                
               
<対人販売(営業)>                
店頭やイベントで顧客と直接コミュニケーションをとります。専門的な製品や高価格帯の製品の販売、顧客関係の構築、顧客のニーズに合わせた提案が可能です。特に対面での提案・販売は有効なコミュニケーションができれば顧客体験価値を高められ、顧客ロイヤリティ向上に繋がりやすいといえます。                
               
<セールスプロモーション>                
割引、クーポン、試供品、プレゼント/付録などの短期的なインセンティブを提供するプロモーション手法です。ターゲットの購買意欲を刺激し、短期間での販売量増加を目指します。クーポンの使用期間、プレゼントの応募期間を設定することで注目度を向上させます。                
               
<広報 (Public Relations: PR)>                
主に報道機関・メディアを通じて第三者から情報発信してもらうことで、情報に客観性・信頼性を持たせ、ブランドのイメージや認知度を向上させる非広告的な手法です。情報発信の内容やタイミングがメディアに委ねられてしまうというデメリットもある一方で、メディアの持つ客観性や拡散性により広告以上の効果を期待できるケースもある点が魅力的といえるでしょう。                
※非広告的な手法は直接的な商品やサービスの宣伝を目的としないマーケティングやコミュニケーションです。                

1-3. 様々なマーケティングフェーズで果たす役割

プロモーション戦略はマーケティング※でどのような役割を果たすのでしょうか。ここでは、マーケティングを進める方々に向けてプロモーション戦略の活用シーンを解説します。                
               
<初回接点構築>                
ターゲット(生活者や企業の担当者)と最初の接点を作り、興味関心を作ることで関係構築を開始するフェーズです。このフェーズでは製品/サービスの認知度を向上させることが重要ですが、いきなりそれらを前面に出しても、そもそも知られていないブランドや製品ではターゲットの関心をひくのは難しいでしょうそこで、ターゲットが関心を持ちやすいテーマをフックに接点を作り、徐々にブランドや製品に繋げていくような仕組みとそのためのコンテンツが必要です。                
                 
<関係強化(ナーチャリング)>                
ターゲットが興味を示した後、購買に向けた関心を深化させます。このフェーズではメールマーケティングやターゲティング広告などを用いて、接触頻度を高めることで関与度を向上させたり、徐々に理解を促していくようなコンテンツ設計がポイントです。                
               
<比較・検討>                
ターゲットが実際の購買に向けて製品やサービスを検討する段階です。製品の特徴や利点を強調し、競合他社との差別化を進めるプロモーションが有効です。このタイミングでは、一律で自社の強みや他社比較を発信するのではなく、ターゲットごとの関心ゴトやニーズを把握し、それらにあった情報を伝えるのがポイントです。施策や予算、リソースにも寄りますが、パーソナライズされた情報が効果を発揮しやすいでしょう。場合によっては、対面営業で行うことも効果的です。                
               
<クロージング>                
最終的な購買/契約決定のフェーズです。最後の一押しで確実な購買に繋げるために追加のインセンティブやサポート情報を提供して、取引を完了させる役割を果たします。在庫限りや期間限定価格などの情報を顧客に伝えることも有効です。                

2. プロモーション戦略策定のプロセス?

  • 目標設定
  • ターゲットオーディエンスの特定
  • 自社と競合他社の分析
  • プロモーション手法の選定
  • 実施計画の立案
  • コンテンツ開発
  • 実行とモニタリング
                 

プロモーションを計画して実行するまでのプロセスを解説します。

2-1. 目標設定

           

効果的なプロモーションを展開するためには目標を具体的な数値で設定することが大切です。ここで重要なのがKGIとKPIの概念です。KGIは事業の最終的な目標を数値化したもので、大きなビジョンや方向性を示します(例:20%の売上増加など)。KPIはそのKGIを達成するための具体的な手段や戦術を数値で示す指標です。(例:1万PV達成など)                
KGIとKPIを明確に設定することで、プロモーションの効果を的確に測定し、戦略の効率化を図ることができます。                
※KGI(Key Goal Indicator):重要目標達成指標                
※KPI(Key Performance Indicator):重要業績評価指標            

2-2. ターゲットオーディエンスの特定

           

ターゲットオーディエンスを正確に特定することで、メッセージの内容や配信チャネル、タイミングなどの戦略を最適化することができます。若い世代をターゲットとする場合、SNSや動画広告が効果的であるといえます。ビジネス層を対象とする場合は専門誌やセミナーが有効なチャネルです。            

2-3. 自社と競合他社の分析

           

プロモーション戦略を進める上で必要となる社内リソースを見積もります。さらに、競合他社のプロモーション戦略を分析し、市場における自社の位置付けを明確にします。            

2-4. プロモーション手法の選定

          

広告、販売促進(セールスプロモーション)、PR、対人販売など最適なプロモーション手法の組み合わせを選びます。予算にもよりますが、どれか一つに絞るのではなく複数の手法を効果的に組み合わせることで相乗効果を狙うプロモーションミックスの考え方も有効です。            

2-5. 実施計画の立案

          

プロモーション活動のタイムラインと実施方法、予算を詳細に計画します。この段階では関係部署との調整も大切になってきます。戦略を決定する上級管理者ともコミュニケーションを取っていきましょう。            

2-6. コンテンツ開発

           

設定したターゲットオーディエンスに響くメッセージとデザインを開発します。何を訴求すべきかというメッセージの方向性が重要なのはいうまでもありません。一方で、方向性をもとに実際のコピーワークやデザインに落とし込むのはクリエイティビティが求められる専門プロセスですので、社内リソースに制限がある場合はアウトソーシングを活用することも検討すべきでしょう。            

2-7. 実行とモニタリング

           

計画したプロモーションを実行し、進捗状況を定期的にモニタリングします。KGIとKPIの検証/評価をし、都度改善を繰り返しながら成果向上を目指します。取り組む手法にもよりますが、以下に短いサイクルで効果検証・改善のサイクル(PDCAサイクル)を回せるかが重要なポイントです。           

3. プロモーションの事例

企業の強みを活用したプロモーション戦略の成功例を解説します。プロモーション戦略の具体的なイメージアップをしていきましょう。           

3-1. 株式会社キーエンス

キーエンスはBtoB領域において、テーマごとに専門的な内容に絞ったオウンドメディアを運営し、興味を持って訪れた読者を囲い込み、メールマガジンを用いて関係構築、商談意向までのしくみづくりを成功させています。提供されるソリューション情報は唯一無二で、企業が抱える課題をピンポイントで解決していくような質の高い内容にしていることもポイントです。                
               
キーエンス独自のイノベーティブ技術や開発研究を基盤とするBtoBプロモーション戦略です。社内リソースの特性を活かした取り組みといえます。                

3-2. サントリーホールディングス株式会社

サントリーは落ち込みがちだったウィスキー事業を回復させるべく、ハイボール需要喚起を狙ったプロモーション戦略を成功させました。サントリーウイスキー「角瓶」のイメージソングやCMを活用してウィスキーの魅力をPRし、需要を再興させています。                
               
さらに実店舗へのハイボールの作り方教習なども行い、事業者へのプロモーションも進めています。BtoCとBtoB双方のプロモーションを同時に行うことで市場再興に成功させた事例です。                

3-3. トヨタ自動車株式会社

トヨタのプロモーション戦略の一つとして注目すべきはオウンドメディアです。2019年に開始したトヨタイムズを用いた情報発信は、第三者メディアを通しては伝わりにくかった会社の想いを社長や現場スタッフ自らコンテンツとなることでダイレクトに伝えられる場となり、さらに、自動車メーカーからモビリティカンパニーに刷新するにあたり必要だった高頻度な社会とのコミュニケーションを可能にしました。                
               
また、企業サイトに終始しないために、タレントや知名度あるアナウンサーを専門レポーターとして起用したり、TVCMやSNSなどと連携したメディアミックスを推し進めるなど、緻密な戦略設計の上の取り組みであることがうかがえます。                

3-4. ネスレ日本株式会社

ネスレ日本はキットカットで「勝負にこだわるターゲット層」という具体的なセグメントに対するプロモーション戦略を成功させました。元々は九州地方で受験シーズンに消費が伸びていることがヒントとなり、2003年から受験生応援キャンペーンとして、受験生が泊まるホテルで無償配布するなど、取り組みを始め、今ではゲン担ぎ、おまじない、縁起物として生活者に浸透し、キットカットはチャレンジを後押しするラッキーアイテムとして広く知られるようになりました。その他の取り組みもあり、キットカットは日本が最も売れている国にもなるなどプロモーション戦略の成功例の一つとして挙げられるでしょう。

3-5. 株式会社吉野家

吉野家のプロモーション戦略の特性は一貫性です。創業124年を迎える吉野家を代表するフレーズがあります。それが「うまい、やすい、はやい」です。驚くべきことに、このフレーズは顧客側から生まれたものであって、吉野家側から戦略的に設定したものではありません。                
               
いつしか生まれた「うまい、やすい、はやい」は吉野家の商品を宣伝する上で最も有効な宣伝フレーズとなりました。吉野家のプロモーション戦略に一貫性を与え、顧客ロイヤリティの強化に成功しています。                

4. まとめ

プロモーション戦略は単純に製品やサービスの認知度を向上させるプロセスではありません。適切なターゲティングからコンテンツ/チャネル選定、効果の分析までを効果的に行うための取り組みです。プロモーション戦略への理解を深め、企業利益にむすびつけましょう。            
           
本記事ではプロモーション戦略の概要やプロセス、成功事例などを分かりやすく解説しました。プロモーション戦略を進める方々に向けてお役に立てる情報となれば幸いです。           

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